時計の電池交換/Cartier must 21 Chronograph ベルト交換

2015.4.26お預かりのCartier must 21 Chronograph ベルト交換です。
「ベルト交換」といっても・・・お申し込みが。

「他の要望:バンド交換(交換用バンド同封)
(可能な限り純正を残したいので、ネジピン、 バックルは純正のままでバンドのみを交換希望)」

取付構造が特殊なバンドですから適当な交換バンドを同梱されても何も出来ません。
よって「これは純正品以外は交換不可です」と回答しておきました。
この純正バンドを一般の人が入手出来るとは考えられず。

「G-SHOCKは専用バンドを同梱頂ければサービスで交換します」という
文章を見られてのご依頼か?
この時計のバンドでも純正品なら同梱頂ければ「サービスで交換」も可能です。
それ以外は、想像するだけで厄介な作業になります。

するとメールが来て。

「交換用バンドにつきましてはブランド純正品ではないものの、きちんと
本時計(ヴァンテアン)専用に作成されたOEM品ですので、サイズ、厚
み等に関しても問題ないと思います。
つきましては、お手数ですが、返送の際には、交換済みのバンドも同
封いただけますようお願いいたします。

また、おおよそで結構ですので作業完了の予定を教えていただけまし
たら幸いです。」

予定も何も現物が無ければ。取付出来るか出来ないかさえ不明ですから。
また取付してみなければ(出来たとして)、どれだけの時間が掛かるか
分からないのに予定を聞かれても回答しようが無い。
「やってみて掛かった時間だけ」としか回答できない作業になります。
素人考えで「サイズ・厚み等同じなら問題無い」という発想でしょう。

とメールを読んでいると時計が到着してしまった。(-_-)

確かに元のウレタン・バンドはヒビだらけ、まして亀裂も入っている。
ウレタン・バンドとはゆえCartierですから純正品は3〜4万円は普通でしょう。
それよりも純正の在庫を現在、持っているところがあるのか?

梱包を開けて、これを見た瞬間。断るしか無いと。
「ベルト調整目安」というのは、このメモ用紙の長さに腕周りを調整という意味でしょう」

これは下手したら時間だけ掛かって何も出来ず費用も請求出来ないパターンに。
またベルト調整のサイズが思いと違うとクレームパターン。
「これは返すしか無い!」と思い返送用の梱包をしておりました。

で「実行するとどうなるのか?」見せないと、今後のお断りが出来ない。
ご依頼を断る為の解説ページが必要、と考えチャレンジしてみる事に。

先ず紙の「バンド調整目安」。メモ用紙からの推測では17cmですが、現状は18cm。
(経験から、メモ用紙の寸法さえがあてにならないのですが。)

もう元のバンドは使いものにならないくらい亀裂だらけ。

先ずはブレスの分解。「バックル・ピンは元の物を使用」という細い指定。
基本、指定が細かい人はトラブルが多く、過去にも断り対象です。

裏蓋は8本ネジで留まっていて裏蓋記載。

ネジも洗浄します。

裏蓋の裏側もチェックして。

パッキンを外して劣化具合をチェックしますが異常は無し。

これがムーブメントで。

ムーブメント拡大。時計自体は問題無いようです。

竜頭の裏側は洗浄でここまでは綺麗に。

竜頭パイプも、ここまでは綺麗になって。

機械、留めネジですが片方が割れております。純正パーツは入手不可ですから
後で何か代用のパーツを探してみるしかありません。

これが取り出した文字盤&ムーブメント。

ケースの内側もチェックして。

ラグ部の足の長いネジピンはお馴染み。このネジはOEM品で真似は出来ない事。
このネジがOEM品の穴を通るのか?それだけでも断りたい理由であります。

裏蓋を閉め洗浄レベルでの水漏れは無いかチェックがてらの洗浄を試み。

ケースの洗浄は終わってツヤが出ましたね。

電池交換メンテナンスの作業自体は問題無く進み。

綺麗になったケースにムーブメントを戻して電池格納部をチェックします。

パッキンにシリコン塗布をして裏蓋に戻し。

ゼロ位置合わせを行って。

さてバンドです。まずはOEM品を分解です。
バックルとウレタン部分はネジで留まっているものが
こちらはバネ棒で留まっております。

バックルの反対側もバネ棒仕様。

そして形状が違います。それ自体は問題は無くても心配なのは。
ウレタン部分だけ交換してバックルが噛み合うのか?それが肝心。
でないと腕に付けられませんから、一番心配するところ。

しかも取り付けてみないと分からず。兎に角厄介な作業を終えないと何も分からない。
正直、やりたくない作業です。
この辺りまでくると
「最悪、交換できなくても手間賃だけは5000円ほど請求する積もりで掛かります。
お客様の予算からは「即、お断り」という金額です。

そして長さの問題もチェックします。

そして希望サイズ部分で折りたためるのか?

そして元のバックルに装着して、ネジピンが通せるのか?
これが想像していた通りの厄介な作業に。”だから断ったのに”というレベル。

折りたたんでピンを通します。

そしてラグ部。足の長いネジピンが通りません。これも無理だろうと想像していた通り。

金属部分の形状も厚みも違います。素人さんにとっては0.1mmの違いは同じに見えるでしょう。

既製の先端のコマを外します。なんと棒が突っ込んであるのみ。
簡単に工具を持って指で押すだけで抜けてしまう。

こちらオリジナル。

こちらは「Cリングピン」で留まっております。
この先端の金属部分だけを交換する事になります。
これが予想以外に厄介な作業となりました。

17cmくらいですが、こちらの17cmとお客様の17cmは殆どの場合で違います。
サイズ調整のやりなおし受付は不可です。

様々な条件をクリアさせて交換は完了。
でもこれをみて「結局、交換は可能なのだ」と思うのは大きな間違い。
純正では無いモノって、物によって作ったところによって規格もバラバラ。
今回のバンドは偶然付きましたが、他のバンドが付くかどうかわかりません。
「同じ様な感じ」は別物とお考えください。
写真の編集などは別でベルト交換のみで30分の作業ですが
これがもし交換出来なかったら?全てが無駄な作業と化し。
元に戻すという費用が頂けない無駄な作業が待っている訳です。

またフェイク物のバンドだけ外して、取付のご依頼も同じです。
あと取付後のサイズの変更とか、後にピンが抜けてきた、とかの不具合の修正も不可。
責任を取れる物や・作業ではありません。

「これでお断りする理由が分かって頂けましたか」

「ブランド2012迄」 「ブランド2012以降」 「ブランド別」